Unitree H1 は中国のロボットメーカー Unitree Robotics が販売する人型ロボットです。身長 180cm・体重 47kg で、全身 19 自由度のアクチュエータを搭載します。2024 年以降の Sim-to-Real(シミュレーターで学習させた制御則を実機に転用する手法)研究で広く使われており、研究機関や企業の PoC(概念実証)にも採用されています。

物理シミュレーションとは
物理シミュレーターは、ロボットの関節・重力・摩擦・衝突をコンピューター上で再現するソフトウェアです。毎ステップ「各関節にどれだけ力をかけるか(-1〜+1 の数値)」を指定すると、物理法則に従って次の姿勢が計算されます。これを 1 秒間に数百〜数千回繰り返すことで、ロボットの動きをリアルタイムより速く模擬できます。
強化学習(AI がゴールに向けて試行錯誤しながら動作を学習する手法)では、この高速シミュレーションを何百万回も回してデータを集め、制御アルゴリズムを訓練します。シミュレーターで学習した動作を実機に転用する手法を Sim-to-Real と呼びます。上のアニメーションは制御則がまだ学習されていない状態で、AI が学習を重ねることで安定した動作が獲得されます。
Google DeepMind が公開している MuJoCo Menagerie は、実機ロボットの正確な物理パラメータを持つ MJCF モデルのコレクションです。今回はその Unitree H1 モデルをそのまま M1 Mac 上で読み込み、100,000 ステップのシミュレーションを実行しました。
検証環境
- MacBook Air(Apple M1 / 16 GB Unified Memory)
- macOS 26.5.1 / Python 3.14.2
- MuJoCo 3.10.0 / MuJoCo Menagerie(Unitree H1 モデル)
実測結果
- 自由度: 25 DOF / アクチュエータ: 19
- タイムステップ: 2.0 ms
- シミュレーション速度: 25,774 steps/秒
- リアルタイム倍率: 51.5x(実時間の 51.5 倍速で進む)
- 100,000 ステップ実行時間: 3.88 秒
リアルタイム倍率 51.5x は、強化学習の訓練ループで「1 秒の壁時間で約 51 秒分の経験」を収集できることを意味します。実機と同一の MJCF モデルを使うため、シミュレーターで学習した制御則をそのまま実機に転用しやすいという利点があります。MuJoCo Menagerie の詳細は公式リポジトリを参照してください。
フィジカルAI分野では実機ロボットの価格が依然高く、個人や小規模チームが実機で試行錯誤するのはコスト面で難しい状況です。M1 Mac と公開モデルを組み合わせることで、実機と同じ物理モデルでの研究を低コストで始められます。
